【イベントレポート】PAF2025 TOKYO登壇 "世界が魅せられるフードフォトの現在地〜写真表現を支えるカラーマネージメント〜"
- shoyakubotaoffice
- 7月20日
- 読了時間: 5分
更新日:6 日前
「どうすれば“美味しさ”が伝わる写真になるのか?」その答えのひとつが、“色”にあります。
2025年7月11日(金)、12日(土)、東京都立産業貿易振興センター浜松町館で開催された写真・映像機材イベント 「PAF2025 TOKYO」。プロから愛好家までが集い、最新の機材に触れ、第一線のフォトグラファーから実践的なノウハウを学べるこのイベントで、当協会代表理事・広告写真家の 久保田翔也 がメインセミナーに登壇しました。
セミナータイトルは、「世界が魅せられるフードフォトの現在地」── 写真表現を支えるカラーマネージメント。このセミナーは、ただの機材レビューや技術紹介にとどまらず、「色とは何か」「文化がどう視覚に作用するのか」「なぜ今、モニターが重要なのか」といった、写真表現の核心に踏み込む内容となりました。


PAFとは?──写真・映像の“道具”と“思想”が交差する場
PAF(Photo Accessory Fair)は、プロフェッショナルの現場で本当に「使われている」アクセサリーやツールに特化した展示・体験型イベントです。2025年の東京開催「PAF2025 TOKYO」では、照明・三脚・編集ツール・配信機材・カラーマネージメントモニター・ストレージ・マイク・バッグまで、100を超えるブランド・企業が集結。
来場者は実機に触れ、担当者から直接使用感や活用法を聞き、さらにはセミナーやトークを通して、表現の背景にある思想にも触れることができます。まさに“機材と表現をつなぐリアルな交差点”といえるイベントです。
実際に手に取り、対話しながら選べる体験型展示がPAFの魅力


PAF2025の会場は、単なる展示会ではなく、「撮影者」と「道具提供者」が直接語り合い、リアルな現場の知恵や工夫を交わし合う場。照明の当て方をその場で試し、プリンターでの色再現性を確認し、三脚の高さ調整を確かめる──そんな“現場目線”のやり取りが会場のいたるところで交わされていました。写真や映像という「表現」に必要なものは、カメラだけではありません。その周辺を支える数々の要素──光、色、音、データ──そのすべてを再構成するイベントです。



世界の「おいしい」は、文化によって異なる
セミナーは、こんな問いかけから始まりました。
「フードフォトグラフィーにおける“美味しさ”のビジュアルとは、世界共通なのだろうか?」
実はそうではありません。たとえば、欧米の表現はコントラストが強く、彩度も高め。ドラマティックな陰影が“食欲”を喚起します。一方で、日本やアジアの多くの国々では、柔らかな光や余白を活かした、繊細で抑制の効いた表現が好まれます。
つまり、「おいしい」という感覚そのものが、文化と歴史、さらには気候や宗教観とも関係しているのです。
この違いを知ることで、写真家は“その土地の言語で美味しさを語る”ような、深みある表現が可能になるのです。


SNS時代の色表現──リアルさと「映え」の狭間で
続いて取り上げたのは、SNS時代のフードフォト表現。InstagramやTikTok、YouTube Shortsのような映像文化の台頭により、いまや「写真=一次情報の表現媒体」ではなくなっています。
どのような色味がクリックされるのか?どこまでリアルさを残し、どこから演出として割り切るのか?──写真家に求められる“表現の判断力”は、ますます高度になっています。
ここで浮かび上がるのが「正しい色を見る環境」の重要性です。そもそも“正確な判断”は、“正確に見えている”ことが前提になります。つまり、写真家自身が「どの色を、どのように見ているか」が、写真全体の説得力を決定づけるのです。


撮影意図をそのまま届けるために──ColorEdgeの存在
セミナー後半では、色表現を支える技術として、EIZO社のプロフェッショナル向けモニター「ColorEdge」シリーズを紹介。
📎 ColorEdge 製品情報はこちら → https://www.eizo.co.jp/products/ce/
RGBの個別調整・広色域(AdobeRGB 99%,sRGB100%)・均一な輝度と色表示・ガンマカーブの工場出荷時調整など、“撮影者の意図”をブレさせずに届けるための性能が随所に搭載されているColorEdgeは、広告撮影や商品撮影のように“色の正確性”が問われる現場で、久保田が実際に愛用している機材です。


「色を正しく見ることは、伝える力そのもの」
久保田自身も広告写真の現場で、クライアントの厳密な色指定や、モニター環境による“色ズレトラブル”を経験しており、「初回の撮影現場から信頼される納品品質を築くには、ColorEdgeが欠かせない」と語りました。
EIZO株式会社 福元さんからColorEdgeのご紹介もありました。

真剣な眼差しに支えられた空間
当日は、40席ほどの会場がほぼ満席となり、会場後方では立ち見の来場者も。客席では、カメラやノート、スマートフォンを片手に、食い入るようにスライドと講師の言葉に耳を傾ける姿が印象的でした。
参加者の中には、現役のフードフォトグラファー、フードフォトグラファーを目指す方、飲食系クリエイター、写真学校の講師、趣味で作品制作をしている方など、幅広い層の方々が見受けられ、それぞれの視点で「色」と「表現」の関係を受け止めていたように思います。
セミナー終了後には、「自分の制作環境を見直したい」「色空間を勉強してみたい」という声も多く聞かれ、講義が与えた影響の深さを感じさせました。



最後にこのたびのセミナー登壇に際し、ご協賛賜りました EIZO株式会社様、ならびに本イベント「PAF2025 TOKYO」を企画・運営いただきました 主催:株式会社スタジオグラフィックス様に、心より御礼申し上げます。
当日は、梅雨の合間の爽やかな晴天に恵まれ、写真文化の未来を語り合うにふさわしい、心地よい一日となりました。
また、会場に足をお運びくださった皆様をはじめ、日頃よりご支援くださっている皆様、そして本記事をご覧いただいているすべての方々に、深く感謝申し上げます。
今後とも、当協会は「食の魅力を伝える写真文化」の価値と可能性を信じ、日本から世界へとその魅力を発信し続けてまいります。
日本フードフォトグラファー協会
事務局 広報担当
文・構成:久保田良子/ 写真:五島雄成/ 動画撮影:市川凌





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